小樽市住吉町に建つ、Atelier-Dが企画・設計・施工・運営までを自社で手がける一棟貸切の簡易宿所。 2020年竣工。建築の図面を引くことに留まらず、建てたあとの収益までを自社で引き受ける—— Atelier-Dにとっての「設計の、その先まで。」を、もっとも純度高く実装したプロジェクトの一つです。
建てて終わりではない、もう一つの扉。
設計・施工・運営を、ひとつの責任の下に。
「D plus one doors」の名は、Atelier-DのDに、もう一つの扉を足すという意味でつけた。 建築家として図面を引き、施工者として建物を建てるところに、運営者としてもう一つの扉を加える。建てる側と、使う側のあいだに通常存在する断絶を、自社のなかで閉じてしまうという発想で立ち上げた一棟。
敷地は小樽市住吉町、観光の中心からはひと呼吸の距離にある住宅地。ファサードはダーク・メタルの縦張りで、立面を二段に分節し、上段にはスリットの連窓、下段には電動シャッターのビルトインガレージを納めた。 観光客の重い荷物・スキー・自転車・冬の長靴を、玄関まで雪に触れさせずに運び込めるよう、ガレージが導線の中心に据えてある。
内部は、ラワン合板の壁面と黒い天井のコントラストを軸に、生活道具のひとつひとつが空間の意匠として読めるよう構成した。 1階にキッチン・ダイニング・リビング、2階にロフトベッドおよび2段ベッド×4台を備えた寝室を置き、最大8名の滞在に対応する。 家族・友人グループ・小さなチームのワーケーションといった多様な使われ方を、ひとつの建築のなかで成立させている。
民泊・収益不動産の市場が「建ててから誰かに運営委託する」ことが主流だった2020年に、Atelier-Dは設計・施工・運営までを自社の手で握る方を選んだ。 結果として、図面を引く段階から「どの導線を客が使い、どの面が清掃され、どの家具が消耗するか」という運営の解像度で建築を考えることができる。 この一棟が、その後のヴィラ・収益建築企画に通じる Atelier-D の方法論の出発点となっている。